ピロリ菌とその検査方法、特に尿素呼気試験についての説明

■ピロリ菌とは■
通常、胃の中は強い酸性なので、一昔前までは菌は存在しない、と言われていました。
しかし、胃の中に存在する尿素を使って、ウレアーゼという酵素で尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、体の周りの酸をアルカリ性のアンモニアで中和することによって生き延びることが出来る、ピロリ菌が居るということが1979年判明しました。
ピロリ菌が胃内に多数存在した状況下では尿素が分解され、アンモニアが多く産生されるため、「息が臭い」原因となります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などの原因となり、除菌することにより胃がんになる可能性が抑えられることもあって、除菌治療が進んできた近年、胃がんの発生率も少なくなってきています。

■ピロリ菌の検査■
・内視鏡時のウレアーゼ検査:胃カメラの際、その場で胃粘膜を採取し、ウレアーゼが陽性かどうかを調べます。その場で結果がわかります。
・尿素機器試験:主に除菌治療後に行う検査です。結果は当日にはわかりません。
・血中抗体検査:血液の中にピロリ菌感染によって出来る抗体を検査します。採取当日には結果はわかりませんが、健診等でよく行われます。
・糞便抗原検査:便の中にピロリ菌の抗原がアルかどうかを検査します。便を持参してもらい、さらに結果が数日かかります。、

■尿素呼気試験の仕組み■
胃の中のヘリコバクター・ピロリ菌感染を調べる検査で、検査薬(13C-尿素)を服用し、服用前後の呼気(吐く息)を採取し、診断します。
タンパク質が分解された最終産物である尿素が、ピロリ菌の産生するウレアーゼにより、さらにアンモニアと二酸化炭素に分解され、二酸化炭素は速やかに吸収、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排泄されるという仕組みを利用しています。

■食事を抜く理由■
食事によって胃粘膜の表面を覆ってしまい、内服した尿素とピロリ菌由来のウレアーゼと反応しないため偽陰性となることがあります。通常健康な胃では約4時間で胃の内容物は二指腸に流出されますが、慢性的な胃炎などにより胃の機能が低下している場合は、半日前後、胃に食物が停留していることがあるため、翌日の朝9時に検査を行う際は、前日の夜9時以降、12時間は食事を抜くことをお勧めします。
普通の水は検査2時間前くらいまでならコップ半分程度は摂取可能です。牛乳は控えて下さい。
緑茶には静菌作用があるため、ピロリ菌が産生するウレアーゼが減少し、ウレアーゼにより尿素を分解して産生されるアンモニアと二酸化炭素が少なくなって、あたかもピロリ菌が減少したような結果となってしまうので、検査当日は緑茶の摂取はお控え下さい。

■検査に影響する食物■
肉類(豚・鶏・牛)、卵、穀類ではトウモロモシ、果物ではパイナップルにも尿素が多く含まれています。魚にはタンパク質はもちろん、浸透圧維持のため尿素が多く存在しており、納豆や豆腐などの大豆製品や乳製品もタンパク質がけっこう含まれているため、一部でも尿素まで分解されているものがあれば、前日の摂取で影響が出る可能性があり、これらの食品は前日の摂取を控えておいた方が無難です。
米や小麦、蕎麦等にもタンパク質が含まれていますが、肉類と比較して尿素まで分解されている量は少ないので、それらの食品の影響は小さいと考えられています。

ピロリ菌の除菌が完了していれば、尿素を分解するウレアーゼが出ないので、呼気中の二酸化炭素が増えないだろう、逆に弱でも陽性なら尿素を分解するウレアーゼが存在する、つまりピロリ菌が居ることを示唆するので、前日の食事は結果を左右しない、制限せずに当日朝の食事だけ抜けば良いという考えの医療機関もあります。

喫煙により呼気の二酸化炭素の比率が増え、ピロリ菌により尿素が分解されたと誤差を生じることがあり、可能でしたら当日は禁煙、最低でも検査前30分は喫煙を控えて来院願います。

■検査に影響が出る薬■
胃酸抑制剤のPPI(タケプロン、ネキシウム、パリエット等のプロトンポンプ阻害薬)やタケキャブ、抗生剤等のピロリ菌静菌作用のある薬剤の服用中もしくは中止直後では偽陰性となる可能性があるため、これらの薬剤の投与の中止または終了後2週間以上経ってから実施します。なお、除菌判定については抗生剤の影響を考慮し、除菌治療薬剤投与終了後4週間以降の時点で実施します。